やまそうの音ゲー紀行

音ゲーに関する幅広い話題について書きます(上達論多め)

クリーンな「青天井音ゲー」を作るのが難しい理由

どうも、やまそうです。

 

今回の記事では「青天井音ゲーというものを定義し、何故このような音ゲーを新たに作るのが難しいのかについて述べます。というのも、ここ最近(何故とは言いませんが)BMSを始めとした創作譜面系音ゲーの話題が多かったので、それに関連して書いてみた次第です。

 

ところで、タイトルに「クリーンな」と書きましたがこれは「特定個人・集団あるいは企業によって運営され、著作権的に問題がない」位のニュアンスで捉えてもらえれば。この手のゲームは(自分も詳しくは知りませんが)程度の差こそあれど著作権上の問題を抱えているので……

 

 

では早速本題に入ります。

本記事における青天井音ゲーとは、「様々な譜面を練習する事で地力を半永久的に伸ばせる音ゲー(かつ創作譜面の概念があると望ましい)」を指します。イメージとしてはBMSのようなゲームを想像すると分かりやすいでしょう。ここからは、クリーンな青天井音ゲーを運営する上で直面する問題点について「権威性」と「理論値ゲー」という2つの観点から述べていきます。

 

① 創作譜面の「権威性」問題

この手の問題を考えた時まず思いつくのが、「既存の音ゲーに創作譜面の要素を足せば良いのでは?」という事です。一見良さそうな解決方法に見えますが、実はいくつかの問題を抱えています。その1つが「権威性」です。

 

これだけ言っても「『権威性』って何だよ!」となってしまうので具体例を挙げて説明します。例えば、iidxに収録されている冥(SPA☆12)という譜面がありますね。

加速地帯に目が行きがちですが、序盤もめちゃくちゃ癖がつきます。

「穴冥はSP皆伝の4曲目を大体*1務めていて、加速地帯にとんでもない連打が来るせいでHARD以上は☆12の中でもかなり難しくて、だから一昔前だと☆12全白*2ボスの一角になってて……」このように「公式が難易度をつけたり、様々なプレイヤーがその譜面をプレーしたりする事によって醸成されるその譜面の立ち位置」、これをその譜面の「権威性」と呼ぶ事にします。

 

譜面に権威性がある事のメリットは何か。それはずばり、プレイヤー間の"凄さ"の共有がしやすい点です。お互いにプレーした事がある譜面であれば、「~という曲で~点出した!」と言った時に、それがどれくらい凄い事なのか、というイメージが湧きやすいですよね。

 

逆に言うと、一部の人しかプレーしない創作譜面では権威性が薄れてしまいますし、その結果「~(ごく一部の人しかプレーしていない難しい創作譜面)で~点出した!」と言っても「で、それってどれくらい凄いの?」となってしまう可能性があります。*3

 

それでは、既存の「青天井音ゲー」ではこの問題をどのように解決したのでしょうか?例えばBMSの場合、これを難易度表の整備によって解決しました。現在BMSにおける主流な難易度表には発狂難易度表・Overjoy・Satellite難易度表・Stella難易度表などが存在します。そして、ほとんどの上達を目的とするBMSプレイヤーはこれらの難易度表に準拠して練習している事が多いように思います。このように、「特定の譜面にプレイヤーを集中させる事で権威性を作り出す」というのは良い解決法だと言えるでしょう。

 

この理屈で行くと例えばAC音ゲーにEDIT機能*4が実装され、創作譜面用の難易度表が整備されれば良さそうな感じもしますが、現実的には難しいと思います。そもそも論として、「公式譜面があるのに、わざわざお金を払って地力上げ目的で創作譜面を触る人間がどれだけいるのか?」という問題があります。つまり、特定の譜面にプレイヤーを集中させるにしても、そのプレイヤー自体がいない訳です。

これは一部で大流行した謎の譜面

結局の所、「創作譜面と毎プレーごとにお金を払う集金システムは相性が良くない」という事なのかもしれません。という訳で、創作譜面機能を実装するのであればスマホ向け音ゲーのような買い切り型のゲームに搭載するのが個人的には良いように思います。

 

 

 

② 最近の音ゲーは「理論値ゲー」傾向である

ここで言う「理論値ゲー」とは「熟練したプレイヤーであれば『理論値埋め』が可能であり、ランカーレベルのプレイヤーであればほとんどの最上位譜面で理論値が出せる」くらいのニュアンスです。少なくともここ5~10年にリリースされたAC・スマホ音ゲーを見回すと、低難易度ですら判定が狭くてトップ層でも理論値が出ない音ゲーは少ないはずです。*5そういう意味では、今BPL対象機種になっているiidxDDR・SDVXは特殊寄りと言う事が出来るかもしれません。*6

グルミクは少し前に上位判定の無償化アプデが入りました。是非やりましょう(宣伝)

余談ですが、最近の音ゲーに理論値ゲーが多いのは「新規プレイヤーの間口を広げるため」という風に個人的には思っています。一昔前であれば「硬派な音ゲー」として判定が厳しくても良かったのかもしれませんが、今やArcaea・プロセカを始めとしたスマホ向け音ゲーが大ヒットした影響で新規プレイヤーの幅が広がりつつあり、そんな中であまりに判定が厳しすぎると「リズム通り叩いてるはずなのに全然光らんやん!」となってしまいそうですし……

 

理論値ゲーの良い所は、「難易度が制御されている」という点です。譜面製作者にもよると思いますが、理論値ゲーの場合「上手い人であれば理論値が出せるか?」という視点での譜面の見方が出来るため、事故レベルの高難易度譜面は生まれにくい"はず"です。*7

 

裏を返すと、「極端に難しい譜面を量産できない」という事です。海外の音ゲーだと、Pump It UpやOverRapidのように「判定が緩い代わりに超高難易度譜面が降ってくる」というものはいくつかありますが、日本の音ゲーだとゲキチュウマイのように「AJ埋め」「理論値埋め」のような練習方法が上手いプレイヤーの間で主流になっている中、フォルダ埋めと"極端に難しい譜面"というのは言う間でもなく相性が悪いです。

極端に難しい譜面の例(Hot Issue D26)

すると、このような極端に難しい譜面は並外れて最高難易度の曲*8でないと実装しにくい、という事になります。しかし、そうすると「外れ値的に難しいが故に、練習できる譜面がその曲しか存在しない」という別の問題が発生します。

外れ値的に難しい譜面の例

これは公式譜面の数が不足しているが故に起きる問題です。前述のBMSとかであれば、プレーする候補となる譜面数が膨大なため、難易度の「連続性」を維持したまま効率の良い練習が出来るのですが……

 

 

 

・おわりに

という訳で色々書いてみました。今回の記事では問題提起だけしてみたって感じの内容なのでちゃんとした解決策とかはないです。強いて言うならば「買い切り型のスマホ音ゲーに公式の曲で譜面を作れるような機能を搭載する」とかでしょうか……個人的にはユメステに創作譜面機能来たら神ゲー・真になると思うんですけどね~

 

では今回はこれで。

 

 

 

 

 

スペースが余ったのでいろみとの画像を貼っておきます

 

 

 

 

*1:CS DJTは黒ICARUSなので実は全部ではない

*2:☆12の楽曲で全てHARD以上のクリアランプをつける事。HARDランプが白い事からこのように呼ばれます

*3:もちろん承認欲求のためだけに音ゲーをしている訳ではないですが、多くの音ゲーマーが「他の音ゲーマーから凄さを認められたい」という欲求を持っている事は否定できないと思います

*4:ところでDDRのEDITはいつ復活するんですかね……?

*5:Arcaeaやグルミクは最上位判定が±25msとかなり狭いですが、それでも理論値ゲーになっているらしい

*6:SDVXはS-CRITICALを実装して後付けで競技性を上げたとも言えますが……それでもLv19でS-PUCとか出るらしいのでプレイヤー側が凄すぎる

*7:と言ってますが正直かなり理想論に近いです。高難易度譜面の難易度を正しく査定できるスタッフがいない(と思われる)音ゲーはいくらでもあるので……

*8:例えばオンゲキだとRecollect Lines(MAS)とか