やまそうの音ゲー紀行

音ゲーに関する幅広い話題について書きます(上達論多め)

何故オンゲキの鍵盤譜面は"つまらない"のか

どうも、やまそうです。

 

今回はオンゲキにおいて、鍵盤譜面が「つまらない」とされる理由について考えていきます。

 

※この記事における「鍵盤譜面」とはラクガキスト(MAS)Love & Justice(MAS)Shamshir -rough Pt.2-(MAS)に代表されるような「読み替えや全押しによる簡略化があまり通用せず、ほぼ見たまま押すしかない譜面」を指す事にします。いわゆる「見たまま押せ高校」譜面ですね。

Recollect Lines(MAS)の見たまま押せ地帯(人間には不可能)

 

とは言ったものの、あくまで挑戦的なタイトルをつけてみただけで、自分自身がこれらの譜面について「つまらない」という感想を持っている訳ではありません。

 

しかしこれらの譜面はオンゲキプレイヤーの間でも賛否両論であり、度々批判の対象となる事があります。*1という訳で何故これらの譜面が「つまらない」と言われてしまうのか、という事について考えていきます。

 

 

 

①オンゲキでやる必然性

まず前提として、オンゲキは一般的な音楽ゲームと比較した際に要求される操作の種類が非常に多いです。鍵盤だけに限らず、壁ボタン*2、フリック、ベルの回収、弾避け、etc……

 

すると、「例えばCHUNITHMと同じノリで鍵盤を置くとすぐに超高難易度譜面になってしまう」という問題に気付くと思います。実際に、ものくろっく曰く*3オンゲキにおける難易度イメージは以下の画像のようになっています。

難しさの目安

では、それだけ多様な要素が存在する音ゲーにおいて、SOUND VOLTEXやpop'n musicなど他の音ゲーでもできるような純粋な4鍵、6鍵配置に難易度のウェイトが寄っている譜面をわざわざオンゲキでやる必要があるのでしょうか?

 

これは難しい問題ですが、プレイヤーの成長を促すためにはある意味仕方なかった、という擁護はできると思います。↑の会報でも氏が言及している通り、「14+までの構成で高難易度ではかなりの鍵盤力を要するものが増えている中、鍵盤メイン譜面が存在しないのもおかしな話」なんですよね。*4

SDVXみたいだぁ(Re:End of a Dream(MAS))

では「プレイヤーの鍵盤力を育てる」という目的で高密度な鍵盤配置が増えていく中で、「オンゲキでやる必然性」を生み出すためにはどうすれば良いのでしょうか?答えはいたってシンプルで、「オンゲキ要素も難しくすれば良い」のです。実際に最近のオンゲキでは、認識難*5、弾避け*6、読み替えると易化する配置*7によって「鍵盤の難しさだけに依存しないオンゲキ」を追求しているように思います。

 

ではここで1つ例を紹介してみましょう。CHUNITHMからオンゲキに移植された蜘蛛の糸(MAS)です。それぞれの機種において、サビの配置は以下のようになっています。

CHUNITHMのサビ(移植元)

オンゲキのサビ(移植先)

2機種の譜面を見比べてみると、CHUNITHMの譜面は後ろで鳴っているキックの音に合わせてゴリゴリの鍵盤が降ってきているのに対し、オンゲキではキックの音を壁で取りつつ、中央から壁が生えてくる事によって譜面の認識が難しくなっています。EX-TAPを駆使する事でCHUNITHMのような譜面も作る事ができたとは思いますが、敢えてそうしなかったのはオンゲキの譜面としてのアイデンティティを求めた結果、と言えるのではないでしょうか。

 

 

 

②地力譜面は「持ち物検査」である

ここでは本題に入る前にゲキチュウマイの音ゲーが共通して持つとある性質の話をしましょう。その性質とは、「意図的に『抜け穴』を用意する事で、運指を組む事をはじめとした単曲対策が有効になりやすくしている」という点です。

 

ここで言う『抜け穴』とは、「必ずしも完全に譜面通り処理する必要がない」という事です。maimaiで言う所の押しスライド*8、CHUNITHMの8分全押しや鍵盤の擦り、オンゲキなら譜面の読み替えなどが該当しますね。

これはサイハテ(MAS)の見たまま押すと脳が爆発する地帯

一方で、オンゲキの鍵盤譜面は「見たまま押さないといけない」という前提があるため、譜面研究をしたからといって急激にできるようになるものではありません。そのため、「見たまま押せる人は常に押せる配置が飛んできて楽しい、見たまま押せない人は対策したからといって常に押せなくて楽しくない」というプレイヤーの二極化が起こります。いわば、「地力の持ち物検査」をしているに過ぎない!という訳です。しかしここで1つの疑問が湧きます。

 

 

Q: iidxポップンに代表されるような鍵盤、ボタン音ゲーは「地力の持ち物検査」によってゲームが成り立っている所がある。もしオンゲキが「地力の持ち物検査」である事で批判されるのであれば、これらのゲームも批判されないとおかしいはず。なのに一般に受け入れられているのは何故?

 

 

A: 1つは「理論値ゲーかそうでないか」、もう1つは「地力上げのしやすさ」というのが影響していると考えています。

 

以下解説します。BEMANI機種におけるいわゆる「鍵盤ゲー」は多くの場合理論値を取るのが困難*9な事が多いです。一方で、ゲキチュウマイは「3機種合計理論値数*10~」という言い方があるように最終的には101%あるいは101万点という理論値を目指すゲームです。

 

すると、「理論値ゲーの方が『一箇所押せない所が存在した場合のダメージ』が大きくなってしまう」という問題が起こります。少し乱暴な説明ですが、iidxでスコアレートを1%落とすのと、CHUNITHMで1万点失点するのでは明らかに後者の方がダメージが大きいですよね。そのため、一箇所できない配置が存在しただけでプレイヤーに「この譜面は全然できない」という印象を植え付けてしまう可能性が高いのです。

MarbleBlue.(MAS)の3000点通行料徴収地帯

もう1つの「地力上げのしやすさ」についてですが、これはオンゲキの抱えるゲーム上の問題とも関連してくるので、次の項にて詳しく解説します。

 

 

 

③地力上げのしやすさ

オンゲキは前述の通り要求される操作が多様なため、多種多様な譜面属性が存在します。これは一見メリットのように見えますが、裏を返すと「地力上げのための鍵盤譜面を十分な数確保できない」という問題が起こります。どういう事かというと、たくさん譜面を作っても色んな譜面属性に分散してしまうために結果的には鍵盤譜面が少なくなってしまう、という事です。

 

また、当たり前ですがオンゲキの鍵盤にはRANDOM*11がかけられません。いわゆる鍵盤音ゲーにおいて地力上げではRANDOMを常備するのが一般的となっているため、この点もオンゲキには不利に働く事でしょう。

突然のTHE SAFARI(H)正規が読者を襲う!

こういう時によく言われるのが、「じゃあ他の音ゲー触って地力上げしてきてから戻ってきたら良いじゃん」という意見です。これに関して、実際に他音ゲーで地力の土台がある超上手い音ゲーマーが存在する*12のでプレイヤーの目線としては同意するのですが、そもそも「ある音ゲーが上手いかどうかが他の音ゲー*13に依存してしまう状況は健全ではない」と思っています。これは別にオンゲキに限った話ではなく*14色んな音ゲーに通じる話です。

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何故なら、もしそのような事が全ての実力帯でまかり通るなら何のために元の音ゲーが存在するか分からないじゃないですか。特にスマホ音ゲーではゲーム性が類似した音ゲーが多いため地力の「移植」が比較的容易なのですが、出来るからといって適当な音ゲーに手を出していわゆる"破壊活動"をしても虚しいだけです。*15そのため、音ゲーにおいては「その機種だけで完結する体系性」*16あるいは「その機種の独自性を活かした譜面」というのがとても大切なのではないでしょうか。逆にこれらの要素がない音ゲーは他の音ゲーに埋もれてしまい、短い寿命を迎えてしまう事でしょう。

 

また、「オンゲキの鍵盤譜面って『出来ない奴が文句言ってるだけ』で片づけたらダメなの?」という意見もTwitterとかでよく言われますね。確かに自分が良いと思っている譜面が単に「鍵盤が難しい」という理由だけで叩かれているのを見るとう~んと思ってしまう所もあるのですが、それはそうと「上達のための体系不足を実力主義のロジックで隠すべきではない」という風に今は考えています。

 

そもそも、「出来る譜面は楽しい、出来ない譜面は楽しくない」というのは大体の音ゲーマーが持っている感覚だと思います。*17そのため、出来ない譜面が楽しくないと言っている人に対して「それはお前の実力不足だから地力上げをしろ」と言うのはあまりにストイックすぎますし、ましてや全ての音ゲーマーにそれを要求する事はできないでしょう。

 

余談ですが、音ゲーに関する話題に関しては話す人同士の間で実力差がある以上、「情報の非対称性」が必ず存在します。上手い人はそうでない人に比べて難しい譜面に対してしっかり言及できるけど、逆に簡単な譜面に対しては簡単すぎて逆に分からない、とか。この事を頭に入れずにそういう話をするとケンカになってしまうので気を付けましょう……

 

 

 

・おわりに

今回はオンゲキの鍵盤譜面に対して何故"つまらない"と感じてしまうのか、という事について可能な限り言語化を試みました。元々自分自身がそういう譜面に対して「面白くない」と言われる事に対してもやもやしていたのもあり、今回記事を書く中で思考が整理された所もあります。

 

自分はオンゲキの鍵盤譜面はめちゃくちゃ楽しいと思っている側なので、「色んな人に鍵盤が押せる楽しさを知ってもらいたい!」と思っているのですが、それが実現するにはもっと譜面数が増えるのを待たないといけなさそうです……ともかく、今後もオンゲキの譜面がどのように進歩していくのか目が離せません。

 

では今回はこれで。

オンゲキーズ王決定戦の三角葵さん、"良い"

 

 

 

 

*1:個人的には自分が鍵盤音ゲー出身な事やこの手の譜面を得意としている事もあり、賛寄りです。そのため今回の記事は否側の人の意見を推測している所が部分的にありますが、大きく外しはしていないはずです

*2:正式名称は「SIDE」

*3:

info-ongeki.sega.jp

*4:余談ですが、LAMIAが追加された週の2週間前にはRe:End of a DreamがVARIETY枠初の14+として収録されており、「普通のアプデで14+をポンと増やすって事はもしかして本当に15が来る……?」と一部の間では予想されていましたね

*5:In Chaos(MAS)や後述する蜘蛛の糸(MAS)など

*6:宙の隣(MAS)やPOTENTIAL(MAS)など

*7:Stardust:RAY(MAS)のラストなど

*8:maimaiのスライドはセンサーを通過した順番で判定を処理しています。それを逆手に取って、なぞるのではなくタッチする事で簡単にスライドを処理する技術の事です

*9:例えばmosaic(SPA)のような8分同時押し主体の譜面でもiidxのEXスコア理論値は非常に困難

*10:ゲキチュウマイ全部めちゃくちゃ上手い人が紫譜面の3機種合計理論値数を競う神々の遊び。合計2000超えの人もいるとか……

*11:iidxポップンにおけるレーンごとに配置を入れ替えるオプション。これによって間違った押し方を覚えてしまう「癖」を予防する事ができます。なおポップンではRANDOMをかけると無理押しが発生する事があるので注意

*12:本当にその機種のトップを目指すなら例外的にやるべき、というのが自分の持論です

*13:特にmal〇dyや〇su!maniaなどは著作権的に怪しいので尚更

*14:むしろオンゲキは上手くやっている方だと思います

*15:実を言うとこれは自分にも思い当たる節がいくつかあり、「好き」という気持ちは大切にしないといけないなと反省しました

*16:とは言ったものの、1つの音ゲーで上達の体系を完全に用意するのは至難の業です

*17:逆に出来る譜面だけど楽しくないは純粋に良くない譜面ですし、出来ないけど楽しい譜面は練習になる良譜面という事になります