やまそうの音ゲー紀行

音ゲーに関する幅広い話題について書きます(上達論多め)

現代の音ゲーボス曲に求められるもの

どうも、やまそうです。

 

今回は現代の音楽ゲームにおけるボス曲において、求められるものは何か?」という事をテーマに書いていこうと思います。とは言っても、お堅い文章というよりは様々な機種の周辺知識を交えながらゆる~く書くつもりなので"音ゲーについての読み物"感覚で読んでくださればと思います。

 

①楽曲の文脈性

早速ですが、(音ゲーに限らず)楽曲にはその楽曲が作られた背景などをはじめとした「文脈」が存在します。*1例を挙げるならば、「この曲は~~というバンドの曲で、作詞した人が~~というメッセージを歌詞にこめて……」「この曲は~というアニメの主題歌で、そのアニメは非常に高い評価を受けていて……」といった感じでしょうか。

「結束バンド」は本当に聴いた方が良いです、取り敢えずアニメ5話まで観よう!

音ゲーのボス曲も例外ではなく、「どのようにしてその曲が登場したか」という文脈はその楽曲の”カリスマ性"を決定づける重要な要素だと言えます。では、ここから実際にボス曲の「見せ方」について2つ程例を見ていきましょう。

 

 

ボス曲の出し方、という言葉でまず最初に思いつく手法として「公式全国大会の決勝で新曲を初お披露目し、それを選手にプレーしてもらう」というのがあります。この手法が広まるきっかけとなったのはKAC2013のSOUND VOLTEX部門決勝と言えるでしょう。

 

KAC2013のボルテ部門においては「KAC2013オリジナル楽曲コンテスト」の最優秀楽曲として、「Bangin' Burst」「For Ultraplayers」の2曲が登場しました。また、当時の最高難易度は15でしたがそれを超える16という難易度で登場したため、プレイヤーに大きなインパクトを与えました。

約9年前らしいです、嘘だよな……???

これ以降、ボルテに限らずpop'n musicやノスタルジア、引いてはゲキチュウマイといったセガ音ゲーにおいても公式大会の決勝で書き下ろし楽曲が発表されるというのが恒例になった事を考えると、その先駆けとなったボルテの音ゲー界への貢献は非常に大きいと言えるでしょう。

Rebellioの時計の演出から「DIFFICULTY XIII」って出る所カッコ良すぎる

もう1つの例としては、オンゲキのMEMORYチャプターの話でもしようかと思ったのですが、それに関しては別記事で思いの丈を語っていますのでそちらをご参照ください。

vivace0319.hatenablog.com

という訳でmaimai FiNALEにおける解禁イベント「PANDORA BOXXX」の話を少しだけ。このイベントは大雑把に言うと、「新曲が追加されるから、解禁条件をみんなで探してね!」というものです。また、このFiNALEというバージョンはmaimaiの新筐体移行前最後であったため、このイベントで追加された楽曲はmaimaiの各バージョンに対応しており、各作品で登場したボス曲の続編を意識させるような楽曲群でした。

 

さて、前座のボス曲6曲を攻略してエンブレムを全て取得すると、特殊な演出と共にボス曲「PANDORA PARADOXXX」が当時の最高難易度13+で登場します。*2

比較的最近の話なので知ってる人も多いのではないでしょうか(3年半前)

そして、やっとの思いで完走するとこれまでのボス曲6曲全てにRe:MASTER譜面が13+で追加される、というトンデモぶり。これにより、多くのmaimaiプレイヤーにトラウマを植え付けました。そしてその後もRe:MASTERを6曲完走するとPANDORA PARADOXXXのRe:MASTERが14で登場したり、それを完走するとエンディングで「Believe the Rainbow」*3がプレーできたりとmaimaiプレイヤーに限らず多くの音ゲーマーに強烈な印象を残した解禁イベントでした。

 

このように音ゲーの解禁イベントとして大成功を収めた「PANDORA BOXXX」ですが、1つだけ改善した方が良いと感じたのは「PANDORA BOXXXの完走に失敗すると、エンブレムが集め直しになるため7クレに1回しか挑戦権がない」という点です。この仕様は特に最速完走を狙うようなトップ層に過大な負担を強いるものであるように感じました。特に公式生放送*4でも語られているように「見ている人も楽しめるように」というのを目指した結果、Re:MASTER譜面は終盤にBPM225の24分トリルを移動しながら叩かせる、というとんでもない配置が存在したため余計に完走狙いでのストレスが大きかったように思われます。*5

 

余談ですが、往々にして解禁というのはそれなりにお金がかかるものです。しかし、個人的には「最終解禁楽曲の『カリスマ性』を盾にしてプレイヤーに過剰な金銭的負担を強いて欲しくない」とは思います。106クレ?怪盗BisCoの予告状?知らない子ですね……

 

②譜面の妥当性

どれだけ楽曲の出し方が良くても、譜面が良くなくては台無しです。ボス曲の譜面は「妥当」である必要があります。ここで言う「妥当」とは「プレイヤーに『自分は出来ないけど、超上級者であれば攻略できるかもしれない』と思わせる事」という意味です。

 

分かりやすくするために逆の例を出してみましょう。ポップンLine Timesという楽曲があります。クラシック8と言えばピンと来る人もいるのではないでしょうか。この楽曲は最初家庭用で登場し、H譜面まではACにも移植されていたものの、EX譜面は「筐体が壊れる」という凄い理由により収録が長らく見送られていました。しかし、pop'n music peaceにて遂にACにも収録されました。

 

そんな曰く付きのEX譜面は全体的にスクロール速度の変化が激しく*6、配置も全体的にかなりおかしいのですが、特に印象的なのが魔王*7パートにおけるBPM200の12分縦連が7小節続く地帯。更にはこの難所を越えてからのノーツ数があまりないため、ここでクリアゲージを空にされるとクリア不可能になります。

????????

これだけ癖の強い譜面のため、EXの難易度は49なのですが最高難易度である50にクリアがついてもクラ8はできないというポッパーが出る有様。*8つまりはとても難しい曲なのですが、では「クラ8がボス曲の譜面として見た時に『妥当』か?」と聞かれてYesと答えるポッパーはかなり少ないでしょう。つまりはボス曲の譜面が難しいのは当然ですが、それと同時にプレイヤーから「地力とか関係なくその譜面は物理的に無理でしょ」と思われてはいけないのです。

 

とは言ったものの、プレイヤーに「上手い人なら出来そう」と思わせるくらいの難易度にする調整は正直かなり難しいと思います。何故なら、譜面を作る側に一定の実力を持ったプレイヤーがいなければ不自然に難しすぎる譜面*9になってしまいかねないからです。

 

この観点で見ると、ボス曲の譜面制作においてゲキチュウマイの譜面チームはとても上手くやっているように思います。ゲキチュウマイ譜面チームはスタッフの音ゲーの実力が非常に充実しており、AC音ゲーでの全国大会出場者がいたり、ゲキチュウマイの元ランカーが譜面スタッフを務めていたりという事があるそうです。

激ムズだけど譜面チームに押せる人いるんだよなぁ

 

③ジャンルの多様性

iidxポップンのようなキー音が存在する音ゲーを想像してもらえると分かりやすいと思いますが、一般的にAC音ゲーでは「鳴っている音のみを基本的に取る」という暗黙の了解があります。*10

ハードコア・シンドローム(MAS)。歌詞が「四分音符なのに みんな走りがちだよ」なので当然譜面も走ります(は?)

ところで、音ゲーのボス曲は難しくある必要があります。そのため、多数のノーツを置く必要があり、先程の前提に立つと音数が少ない曲でボス曲に相応しい譜面は作りにくいのです。そのため、ボス曲となると高BPMで音数が多い楽曲ばかりになってしまいがちです。

 

特にこれが問題となるのはボルテのKACコンテストのように、「ボス曲を一般から公募する」場合であると考えられます。この時、楽曲を制作するアーティストの側も音楽ゲームをある程度触っていれば前述のような曲が求められる事は当然理解しているはずなので、結果として高BPMで音数の多い曲が集中します。乱暴な言い方をすれば「ボルテの高難易度って工事現場しかなくね?」という批判であり、実際にそのような意見は自分も他のプレイヤーから聞いた事があります。ちなみに豆知識ですが、ボルテのLv20は2022 11/20現在20曲存在しますが、その中で最大BPMが200未満の楽曲はなんと2曲しかありません。*11

 

確かに「そういう音楽ジャンルが集中する事自体がその機種特有の楽曲と言えるのでは?」という意見も分からなくはないのですが、やっぱり個人的には同じアーティストでも色んなジャンルの曲を聴きたい!と思ってしまうんですよね。

 

例えばかめりあさん。氏といえばボス曲制作アーティストの筆頭とでも言うべき方ですが、多くの人はボルテのDyscontrolled GalaxyやBlastix Riotzのようなキックを特徴とした曲をイメージされる事でしょう。しかし、iidxのRoutingやmaimaiのSageといったJazzyな楽曲やMUSECAのオリガミカル・スウィートラヴやポップンの朧月覆う雲をも裂きぬなどの歌モノのように実は幅広いジャンルでご活躍されています。特に氏の作曲能力の高さを代表する事例として、ボルテで猛威を振るっている混乱少女 そふらんちゃん!!ですが、CDに収録されているフルバージョンは9分もあります。

全員誰か分かるかな?(正確には左上30-999ですね)

では「高難易度譜面を作る」と「多様な音楽ジャンルを確保する」という一見矛盾した要求を両立させるためにはどうすれば良いのでしょうか?正直な所、これは音ゲーの譜面製作者ですら頭を捻る難題なのではないかと思っています。と言うのも音数が多くない曲で難しい譜面を作ろうとすると、ただ単にノーツを置くだけでは密度不足になってしまうので「その音ゲー特有のギミックが難しい譜面」という方向性を目指す事になるでしょう。しかし、新しいギミックを導入するとなると「その動きは本当にその音ゲーでやって面白いか?」という問題が生じます。これを常日頃から考えている譜面製作者の方々には本当に頭が上がりませんね~

BPM150の4分と8分しかないのにLv14*12らしい

 

おわりに

だらだらと思う所を書き連ねて行ったら気付いたら5000字近くになってました。実は今大学に行く機会も無くなって結構暇だったので、「久しぶりに音ゲーについてちょっと考えてみようかな」と思い立って書いていたのですが、やっぱり音ゲーについて考え事をするのは楽しい、というのを再確認できました。12月にはゲキチュウマイアドカレの方にも参加していますので今回の記事を読んで面白いと思った方は是非そちらも読んでくださると幸いです。

 

それでは~

*1:より拡張するのであれば、芸術作品全般もそう言えるかもしれませんね

*2:当時maimaiの最高難易度は13

*3:Shoichiro Hirataの曲、実はBeat of getting entangledとLuv 2 Feel Your Bodyしか知らないらしい

*4:

www.youtube.com

*5:実際ストレスを与える仕様である事は公式生放送でも指摘されています

*6:いわゆるソフラン

*7:ArcaeaのWorld Enderの事ではなく、シューベルトの方

*8:そもそもポップンのボタンで縦連を捌くのが厳しいので……

*9:俗に「エアプ譜面」なんて揶揄されますね

*10:例外もあります、Pump It Upっていうゲームなんですけど

*11:《Re:miniscence》の125-166とWHITEOUTの198

*12:Möbius(INFERNO)を除くと最高難易度