やまそうの音ゲー紀行

音ゲーに関する幅広い話題について書きます(上達論多め)

【ノベルゲー感想】創作彼女の恋愛公式/Aino+Links

どうも、やまそうです。

 

今回はAino+Links様の「創作彼女の恋愛公式」の感想について書いていこうと思います。元々このゲームは少し興味があったのですが、高校の先輩のサークルの後輩(!?)がオススメしていたのでせっかくならという事でプレーしてみました。ちなみに彼も感想記事を書いているのでそちらもどうぞ。

t-8s3i.hatenablog.com

自分はノベルゲーの感想記事を書いた事がほとんどないのですが、今回こうして記事を書いているのはこのゲームが本当に素晴らしかったからです。これまでプレーしたノベルゲーの中で間違いなく5本の指に入るくらいの傑作だと思います。余談ですがブログのネタ確保と自分の感じた事を言語化する練習も兼ねています。

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タイトル画面

このゲームについてなのですが、公式HPに大体載っているので詳細はそちらに譲るとして、とにかくオープニング曲がめちゃくちゃ良いので聴いてください。

ainolinks.com

www.youtube.com

と言っても流石に公式HPに説明を丸投げするのはアレなのでストーリーについて言及しておきます。ズバリ一言でまとめるなら、「クリエイター養成学校に入学したキャラクター達の卒業までの3年間を描いた成長物語」です。ちなみに作中で題材として扱われるクリエイターは主に「作家・シナリオライター」「イラストレーター」「声優」になります。創作活動をテーマとした作品というのは最近流行っているような気がしますが、その手の作品が好きな方なら気に入ると思います。特に絵を描いたり、(この作品では出てきませんが)作曲をしたり、と実際に創作活動をしている方は後悔しないので絶対にプレーしましょう。

 

さて、ここから具体的な内容について言及していきます。以下ネタバレ要素になりますので、プレー後の閲覧を強くお勧めします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1. 共通√について

共通√は全部で8話構成となっており、逢桜、桐葉、ゆめみ、エレナの4人のヒロインそれぞれにフォーカスした話が2話ずつとなっています。各話の概略は以下の通り。

 

1話: 逢桜との幼馴染の関係、過去の恋愛感情に対して決着をつける話
2話: 桐葉の素顔を知って、「エンラブ」の解釈を考える話
3話: ゆめみの引きこもりを治して才華学園へ通うようになる話、雨星の登場
4話: エレナ=COLORLESSと判明する。主人公のスランプが治る。アドレセンス・シンドロームのコンペの話が出てきて、主人公と逢桜のダブル受賞となる
5話: AS制作開始。ゆめみが絵を描く理由について。イラストレイター科のコンペの話。
6話: 桐葉の両親に声優活動を説得させる話
7話: エレナのスランプを脱する話
8話: 逢桜が珠久里に誘われて、主人公達に別れを告げるまでの話

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女の子が主人公を庇って激昂するシーン大好き

このゲーム共通√が本当に面白いんですよね。何故面白いのか、というのは後述の「ゲーム全体として」でも言及しますが、ここで1つだけ挙げるとするならば、話の見せ場として心が動くシーンが多いからだと思います。大体1話につき最低1回はそういうシーンがあった印象です。これにより、ノベルゲームを消化している時にありがちな中だるみが起きず、最後まで楽しんで読むことができました。

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幼馴染に言われたい台詞ランキング第1位

2. 個別√について

ヒロインの攻略順序ですが、エレナ→桐葉→ゆめみ→逢桜の順でした。個人的な面白さとしては、逢桜>>桐葉=ゆめみ>エレナです。

2.1. エレナ√

正直な所、ヒロインにあまり感情移入できなかったせいでそこまで楽しむ事ができませんでした。と言うのもエレナは「天才であると同時に風変わりな行動を取る人物」として描かれているからです。そのため、共通√の奇怪な行動を取る印象が最後まで抜け切れず、ヒロインとして見れなかったなぁと。なんなら他√ですら隙あれば主人公を他ヒロインから奪ってこようとするし……また主人公が恋愛感情を自覚してからエレナと付き合うまでの過程がかなり短く、その点も気になりました。

 

話の流れとしては、「天才に追いつこうとする凡人と、自分の才能を疎んでいた天才少女が自分の才能を受け入れられるようになる話」ですね。個人的に面白いな~と思ったのは姫ちゃんとエリカの会話シーンです。姫ちゃんは非常にストイックな小説家であり、「才能に打ち勝つためにはそれだけの代償を払う必要がある」という考えを持ち主人公を追い込もうとします。一方で、エリカは「クリエイターも一人の人間だという考えを持ち主人公を追い込むのはやめてほしい、と言います。どちらの考えもクリエイターの在り方として納得できるものなので難しいよね……このテーマ自体は面白かったので、単純にヒロインがnot for meなだけだったような気がします。

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どちらの考え方も分かるんだ……

2.2. 桐葉√

「恋人を取られそうになって恋愛感情を自覚する」という展開は結構ベタですが、キャラの魅力を引き出した良いシナリオでした。桐葉は共通√から「自分の成功のために周囲を利用しようとする打算的な人物」として描かれています。そこから自分の気持ちに気付き、主人公と付き合い始めるという流れですね。

 

桐葉√は「声優である事」を上手く活かしたお話だったと思います。具体的には、声優の厳しさや声優と付き合う事だったりですね。特に、桐葉が主人公と付き合っている事を公表する生放送についてのコメントは「本当に厄介声優オタクはこういう事言いそうだよなぁ」と思わせるようなものでしたね……声優ガチ恋勢の顔終わってそう。

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あ~あ

シナリオ後半では主人公が厄介オタクに刺された事がきっかけで桐葉が失声症になってしまう訳ですが、主人公が桐葉の実家で桐葉を激励するシーンは良かったですね。あそこで立ち上がってこそ桐葉の「成功しようとする意志の強さ、貪欲さ」といった魅力が光る事をよく分かっていらっしゃる。

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ここで敢えて厳しい事言える主人公は偉い

2.3. ゆめみ√

こちらも桐葉√に負けず劣らず面白いシナリオだったと思います。特に主人公と付き合い始めるまでの描写が丁寧で良かったです。くすはらゆいさんの演じる金髪妹キャラは正義なんよ。

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この表情大好き

お話としては「絵を描く理由を見つける話」であり、共通√5話を更に掘り下げた感じですね。ゆめみは現実世界が上手くいかず、「絵を描いている間は現実逃避できるから」というある意味消極的な理由で絵を描いていました。そこから「主人公が『絵を描いているゆめみが好きだ』と言ってくれた事」という絵を描く積極的な理由を見つけるまでのお話でした。

 

個人的に好きなシーンは、ゆめみのスランプを何とかするための解決策として姫ちゃんが主人公にゆめみと別れろ、というシーンです。「ゆめみの生活が充実し始めて、絵の世界に現実逃避をする必要がなくなってしまった。それならば、現実逃避せざるを得ない状況にしてしまえばいい」という訳ですね。普通の人からしたらあり得ない発想ですが、姫ちゃんのクリエイターとしての情熱と狂気が浮き彫りになったシーンで印象に残りました。

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担任の教師がこういう事言うの凄いよなぁ

これはゆめみ√だけに限った話ではないのですが、この作品全体として「創作に命を懸けられる人」「何かしらの理由により創作活動をする事になった人」の両方が描かれています。前者は主人公や逢桜や姫ちゃん、後者はゆめみやエレナですね。お互いの目線から創作についての考え方が述べられているのはとても良いと思います。

 

2.4. 逢桜√

逢桜√を読み始める前にまず思ったのは、「どうやってこの話展開させるんだろう……?」という事でした。他の√では「自分はクリエイターだからこそ逢桜の背中を押してやれた」というような事を述べているため、もし逢桜を引き留めるのであれば相当強い理由がない限り主人公の行動が一貫していない事になってしまいます。また、共通√8話にて「『創作活動で命を燃やさないで欲しい』と言っている逢桜の両親がわざわざ逢桜の海外留学を認めるだろうか?」といった点も疑問でした。

 

しかし、話の軸となるポイント即ち「逢桜の寿命が残り少ない」という事は読み始める前に何となくですが予想はついていました。持病で野球をやめている事、共通√7話で逢桜が「諦観めいた表情」をしていた事、そして桐葉√のエピローグでほぼ確信しました。

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"今はいない"親友……??????今は(日本には)いない親友という解釈もできるけど……

作中では、逢桜の残された短い寿命に対して「寿命を削ってでも創作をさせてやるべき」「残された命をゆっくりと過ごすべき」という2つの考えがぶつかり合います。一般的に考えれば、正しいのは後者でしょう。しかし、逢桜はクリエイターとして前者の選択をし、それを貫き通しました。カッコ良すぎない??????

何かに取り憑かれたように夢中になって命を燃やしている瞬間の美少女が一番輝いている、という事は声を大にして伝えていきたい。(突然の限界オタク化)

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真剣な表情本当に好きなんだ……

逢桜の「わたしは、奇跡なんていらないんだ」という台詞はまさに彼女の強さと生き様を体現したものでしょう。自分の運命を受け入れた上で、それでも自分が生きた証を作品に残そうとする姿勢ですね。創作に対する考え方があまりにも純粋すぎて尊さで死にそう。もし自分が今一番推しているキャラである「あおかな」の倉科明日香ちゃんと出会っていなければガチ恋していただろうな、と思わせる位魅力溢れるヒロインでした。

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逢桜……お前は本当に強い奴だよ

3. ゲーム全体として

3.1. 良かった点

3.1.1. 作中作の説明が非常に丁寧

創作活動を題材とした作品は沢山ありますが、「創作彼女は明らかに他の創作をテーマとした作品と一線を画すものだ」と確信したのがこの点になります。共通√2話の時点で既に「エンディングから始まるごく普通のラブコメ」(通称:エンラブ)について主人公と桐葉が登場人物の行動について考察するシーンがありますが、一番凄いなと思ったのが「アドレセンス・シンドローム(通称:AS)」の設定の緻密さです。普通の創作をテーマとした作品であれば作中作のタイトルとどういう系の話か、というのを提示して終わりだと思います。

 

しかし、創作彼女ではASに関して世界観設定とヒロイン4人の性格について詳細に語られます。更に共通√5話でイラストレイター科のコンペで雨星案とゆめみ案の2種類のキャラデザがきちんとあるのも素晴らしい。また、逢桜√のラストではASのシナリオが本編と関連してくるのも良かったです。と言うか普通にこのゲーム面白そうだしプレーしてみたくない……?

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伏線の張り方といい、このゲーム凄く"丁寧"なんですよね
3.1.2 「オタクコンテンツ」という題材を活かしたリアリティ溢れるシナリオ

この作品ではノベルゲーム、アニメ、イラストといったいわゆる「オタクコンテンツ」がテーマになっています。本作はそのテーマを上手く活かしているなと思いました。例えば、作中では「オタクあるある」が頻繁に登場します。そのため、こういうノベルゲーをプレーする層にとって納得できるような内容が出てきて読んでいて楽しかったです。特に共通√1話で主人公が逢桜に「オタクとはどういう生き物か」を教えているシーンは頷きっぱなしでしたね。

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キャラゲーに喧嘩を売っていくスタイル

また、前述の「作中作の説明が丁寧」という事とも関連してくるのですが、これらの作品を生み出す創作者の事情がリアルに描写されているなと感じました。共通√の3話で「雨星がSNSの裏垢で才能を持つのに十分に努力していないゆめみに対して愚痴をこぼしているのをゆめみが見てしまう」という話だったり、「CNGの制作中にサークルが女関係で空中分解する」という話だったりって実際に起こりそうじゃないですか?全体として良い意味で「現実的」なシナリオだったと思います。

3.1.3. BGMが良い

「この曲がめちゃくちゃ良い!」と言うよりかは全体的に聴いていて心地良い楽曲が多かったです。個人的におすすめの曲は「青春を謳歌せよ」「円卓のお茶会」「甘味と苦みと看板娘と」「共に歩む桜道」あたりでしょうか。

3.2 気になった点

3.2.1. 誤字、バグが多い

自分が気付いたものだけでも誤字が10箇所程度見受けられました。また、桐葉√の2つ目のHシーンでバックログが閲覧できないバグがあるようです。

 

あと自分のPCでは突然ゲームが起動できなくなる現象が2回くらい起こり、カスタマーサービスに連絡する羽目になって大変でした……

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セーブデータを手動で消したら治りました

4. 追加コンテンツの話

創作彼女ですが、なんと本編後日談+ifストーリーを収録したアペンドパッチの配信が決定しています。これについて少し書いておこうと思います。

 

個人的には雨星√を実装してほしい!と思っています。流石にあれだけ魅力的な後輩がいて主人公が惹かれないのはおかしくない??????共通√では努力家の側面が強調されていたので、雨星vsゆめみ、努力vs才能みたいな話にしたらめちゃくちゃ面白くなりそう。Aino+Links様何卒ご検討の程よろしくお願い申し上げます。

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雨星には本当に報われて欲しい

そしてもう1つ気になったのが、天花寺珠久里の存在です。天花寺の名前は物語開始直後から登場するのでいわゆる"ラスボス"的なポジションなのかなと思っていたのですが、作中では世界的な小説家である事、姫ちゃんをして「鬼才」と言わしめる程の実力の持ち主である事、姫ちゃんやちなみさんなど大人世代の才華学園卒業生である事位しか語られていません。全体的に創作彼女というゲームが丁寧に作られている事を考慮すると、明らかに不自然な点であると言えます。そのため追加シナリオで言及されるんじゃないかな、と予想しています。

 

個人的には、大人世代の話の掘り下げはもっと見てみたいな~と思います。学生時代の天花寺とか、大人世代が才華学園時代に制作したゲームである「名残雪@ヒーローズ」の制作秘話とか。

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いっその事大人世代の才華学園時代をテーマに続編作りません?

5. 総評

本当に素晴らしい作品でした。創作彼女は「クリエイターの在り方」が大きなテーマとしてありますが、「実際に創作活動をしている人が読めば、創作に対する向き合い方が変わってしまうんじゃないか」と思わせるくらい熱量が込められたシナリオだったと思います。作中ではヒロイン達がシナリオを読んでそれに救われる、という展開が見られましたが、創作彼女も同様にこのシナリオを読んで救われる、と言うより価値観や影響を受ける人は一定数いると思います。

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残酷な未来は全部書き換えてしまえ

6. おまけ

最近ノベルゲーをプレーする時に、話の内容や伏線等を忘れてしまわないようにメモを取る事が増えました。という事で自分が創作彼女をプレー中に取ったメモを公開します。とは言っても、人に見せる事を想定していないので雑多な書き方になっているのと、2万字以上あるので、本当に読みたい方だけ読んでください。

drive.google.com

 

それでは~

 

【2022 1/25追記】

この感想記事を書き終わってから、他の方の創作彼女の感想文をいくつか読ませていただいたのでそれについて少しだけ書いておこうかと。

 

1. 逢桜√のラストシーンについて

逢桜√のラストでは、逢桜が最終的に亡くなったという事を直接示す文章は出てきません。そのため、「逢桜はあの後生きているのか死んだのか解釈が分かれる」という書き方をしているものをいくつか見かけました。個人的な意見ですが、ラストシーンに関しては逢桜は亡くなった、と解釈して間違いないと思います。桐葉√のエピローグを参照してもそう言えますし、何より作品のテーマが最大の証拠です。

 

逢桜√で強調され、そして創作彼女という作品全体で提示されているクリエイターの在り方は「クリエイターは自分の命を削ってでも、目の前の作品に命を懸けてしまうどうしようもない生き物なんだ」というものです。繰り返しになりますが、「わたしは、奇跡なんていらないんだ」「欲しいのは……この物語を終わらせるための時間だけだから」という逢桜のセリフがあります。ここで言っている「奇跡」というのは当然「逢桜の病気が治る事」です。そして、可能性の低い奇跡に賭けるくらいなら、自分の物語を書き切って自分が生きた証を残すという覚悟の表れでもあります。結果的に彼女は足が動かなくなろうと、手が動かなくなろうとASという作品を書くために全てを捧げました。そのため、ラストシーンで逢桜が亡くなっていないとシナリオ全体のテーマが崩れてしまいます。

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クリエイター同士だから成立するカップ

ところでアペンドがあるって事はifで逢桜生存ルートが見られるって事なんですかね?逢桜は個人的にめちゃくちゃ好みのヒロインなので、主人公とイチャイチャしている所は正直めちゃくちゃ見たいんですけど、上手くやらないと作品全体のテーマ性を壊しそうなので複雑な気持ちですね……

 

2. 逢桜√のHシーンについて

これについては多くの記事で触れられていましたね。「ただでさえ余命が短い身なのに、病院から抜け出して旅館で夜通しセックスしてるのはどうなんだよ」という事ですね。これだけ見たら主人公完全にヤバい奴になっちゃいますし。これは自分も思いました。

 

ただ、これに関してはある意味仕方ない所もあるのかなぁという気がしました。このゲームを「エロゲ―」という媒体で売り出している以上、「センターヒロインのみHシーンが存在しないエロゲ―」を出すのはかなり厳しかったと思います。Hシーンを見ていても全キャラである程度流れを統一させてた印象もありますし。(3つ目が長いだとか)

 

とは言っても、現実的な妥協ラインとして「逢桜の身体的事情を考慮して、Hシーンの数を削る」といった何かしらの工夫が見られて然るべきではあるかなと思いました。